何を気にして生きるか
小出さんの言う京都の家は、うちじゅうのすべての箪笥に、転倒防止器具が装着してあったそうだ。「総桐の箪笥で、ああ、この家はかなりこだわっているなとわかったけれど、地震を機に、美観を捨てたのね.見た目は二の次!という覚悟を感じたわ」そうまでしないと、わが身は守れないのか。小出さんによれば「突っ張り式の転倒防止器具は、かなり威力があるらしい」とのこと。金属製の棒を、家具と天井との間に取り付けるものだ。本棚に四本、食器戸棚に二本、取り付けることにした。これは、近くのホームセンターですぐみつかった。さすが家具の転倒を防止するものだけあり、一本がかなり重く、何回かに分けて買ってこないとならなかった。開き戸は、皆どうしているのか。同じマンションの人に、「流しの上の収納、頭から落ちてくる恐怖を感じませんか」と聞いてみると、「それより私は、自分がボケるのが怖い」と、まったく違う答が返ってきた。何を気にしながら生きているかは、人それぞれなのだと、改めて思った。
大げさな扉
近くのホームセンター、スーパー、デパートにも、それらしいものはなく、郊外のホームセンターまで出かけていった。となりの駅から街道を歩き、(東京にまだこんなところが残っていたか)と思うような畑を抜け、豪農の家の間を通り、なおも歩いて、三十五分かかった。車による来店を想定している店なのだ。あるにはあったが、扉の表に取り付け、二枚の扉を鎖でつなぐという、大げさなもの。かけたり外したりが面倒で、台所仕事の間は外しっぱなしにしてしまいそうだ。が、それでは意味がない。私が台所にいるときこそ、落下を防止してほしいのだから。売り主のオオイリさんはどうしていたか、電話のついでに、話してみた。「ああ、そうね。そこは、引いて開けるんだったわね」オオイリさんが今住んでいる家は、押さないと開かない金具が、扉の裏にはじめからついていた。「外から押すとワンタッチで開くけれど、引いてはびくともしないのよ」内側から外側への力はロックされるということか。そういう金具があることを、はじめて知った。